【現役動物看護師が解説】キャットフードの正しい選び方

【現役動物看護師が解説】キャットフードの正しい選び方

・猫を飼い始めたけど、どのキャットフードを食べさせればいいのか分からない…
・お店に行くとフードの種類が多すぎて迷う…
・ネットの情報が溢れすぎて本当に良いフードが何かわからない…

「結局どのフードがいいの?」と、このような悩みでキャットフード選びに苦労している飼い主さんは非常に多いです。

私は動物病院で8年間勤務しており、実際に猫と6年以上暮らしているので、それなりに知識と経験があるためフード選びで悩むことはないのですが、初めは皆さんと同じように何を食べさせればいいのか分かりませんでした。

そこでこの記事では、初心者でも迷わずにキャットフードの選び方をわかりやすく解説します。

結論から言うと、健康であれば総合栄養食ならどれでもOKです

ほんとに!?

なぜどれでも良いのか、根拠を解説していきます。

目次

キャットフードの基礎知識

まずフードの選び方を解説する前に、知っておくべきキャットフードに基礎知識を解説します。

フードの種類

種類詳細
総合栄養食水とそのフードのみで必要な栄養素が摂取できるフード
間食いわゆるオヤツ
療法食治療の内容の合わせてフード中の栄養成分の量や比率が調節され、
治療を補助する目的で使用されるフード
その他の目的食副食:嗜好増進などを目的で与えるフード
栄養補助食:特定の栄養の調整やカロリーの補給などを目的としたフード

 今回は「総合栄養食」に絞って解説します。

フードの形状

形状詳細
ドライ水分10%以下のフードで、加熱発泡処理された固形状のものがほとんど。
セミモイスト水分25~35%程度のフードで、発泡処理していないもの。
ソフトドライ水分25~35%程度のフードで、加熱発泡処理されている。
ウェット水分75%程度のフードで、品質保持のために殺菌工程を経て、
缶詰やレトルトパウチ、アルミトレーに充填されたフード

ドライフードが好きな猫もいれば、柔らかいフードが好きな猫もいます。
管理がしやすいのはドライフードですが、嗜好性が高い(美味しい)のはウェットフードにある傾向です。

犬はセミモイストフードやソフトドライフードの商品が多く存在しますが、猫はドライフードとウェットフードがメインです。

またあまり水分を取ってくれない猫に関しては、ウェットフードで水分を確保する場合あります。

その猫の好みや体調、フードの管理のしやすさで選択しましょう。

キャットフード選びのポイント

ここからが本題の”キャットフード選びのポイント”です。

ポイントを3つに絞って分かりやすく順に解説していきます。

キャットフード選びのポイント

・価格
・品質
・メーカー

ポイント① 価格

フードは当然ですが一生買い続けなければならないものです。
つまり、フードによって単価数百円〜数千円の価格差がありますが、将来的に考えると数万〜数十万円の出費の差になります。

フードを選ぶ際に、値札ばかり気にしてしまうことはないですか?
ですが本当は「価格じゃなくて品質で選びたい」と思っている方がほとんどだと思います。

品質の良いものを与えたいから、とりあえず値段が高いフードを買えばいい?

値段と品質は比例する傾向にありますが、必ずしも値段が高いので品質が良い、値段が低いから品質が悪いとは一概には言えません。

理想は品質を重視した上で納得できる価格がベスト。

次は品質について解説します。

ポイント② 品質

猫にとって「品質の良さ」とはなんでしょうか。

・穀物の入っていないフード?
・動物性のタンパク質が多いフード?
・酸化防止剤や防腐剤、保存料が含まれていないフード?

調べれば調べるほど、情報が溢れ出てきてなにがなんだか…

と言う人も多いと思います。

特にネットの情報は誤った情報が1人歩きしていることがよくあるため、情報を取捨選択する必要があります。

例えば….

・猫において、グルテンが体に悪影響を及ぼしたというデータはない
・タンパク源の多いフードは腎臓に負担をかける
・酸化防止剤が入っていないフードは管理が難しく、かえってフードの質が下がる可能性がある

など、科学的にわかっているデータもあれば、まだわかっていないデータもありますし、管理方法次第で質が変わることもあります。

飼い主さんから疑問が出やすい部分を解説します。

グレインフリーのフードは猫にとって良い?

「猫は肉食だから…」「穀物を消化できないから…」「アレルギーの原因になるから…」と穀物の入ったフードを避ける飼い主さんがここ数年で増えています。

本当にグレインフリーのフードがいいのか。

結論「アレルギー症状が出ていなければグレインフリーである必要はない」です。

グレインフリーとは、穀物不使用のフードのこと

たしかに「猫は肉食なので、本来の食事を与えるべきだ!」という意見があっても不思議ではありません。しかし、科学的根拠があるのかどうかが重要なポイントです。

例えば、穀物が原因とされるアレルギーが猫では多くないことがデータとして出ており、よくキャットフードに使用されるトウモロコシも、食物アレルギーを起こしにくいフード原料の一つであることが明らかになっています。(Hill’sのHP参照

また穀物の消化に関しては、人も犬も猫も消化によくありませんが、加熱処理することによりデンプンの構造が壊れて(α化)消化が可能になります。キャットフードも加熱処理が行われており、穀物が含まれていても消化には問題ありません。

グレインフリーのメリットとデメリットを整理しましょう。

メリットデメリット
・穀物アレルギーの猫には適したフード
・良いものを食べさせている気になる
・原材料を厳選するため価格が上がる
・高タンパクに偏ったフードの場合、肝臓や腎臓に負担がかかる

結論、穀物には炭水化物や必須アミノ酸など必要な栄養素が含まれているため、アレルギー症状が出ていないのであれば、あえてグレインフリーのフードを選ぶ必要はありません。また、肝不全や腎不全を持っている猫は高タンパク食は推奨されないので、穀物アレルギーでグレインフリーのフードを与える際は、獣医師と相談してなるべくタンパク含有量が少ないものを選びましょう。

酸化防止剤不使用のフードは猫にとって良い?

答えは「管理の仕方による」です。

酸化防止剤を入れる目的は、当たり前ですがフードを酸化させないためです。
逆に言うと、酸化防止剤が含まれていないフードは酸化しやすいということです。

こんな方は注意

・マイペースに食べるのでドライフードは日中置きっぱなし
・フードは大袋で購入する
・フードの袋を完全に密閉しないことがある

もし酸化防止剤が含まれていないフードを購入する場合は
・なるべく最小単位で購入し
・開封後は空気を抜いて完全に密閉し
・フードを置きっぱなしにしないこと

それが難しい場合はフードが酸化し、かえって猫にとって不健康かつ美味しくないフードになってしまいますので、購入の際は愛猫にとってどちらが良いか判断しましょう。

ペットフード安全法により、安全なもの・安全な量のみが含まれるように規定されているため、実際のところ酸化防止剤が含まれているフードを与えても問題ありません。

私個人としての意見は、酸化させるくらいなら酸化防止剤が含まれているフードを選ぶべきだと考えています。
メーカーによっては人工の酸化防止剤を使用せずに自然由来のものを使用しているものもあります。

ヒューマングレードのフードを選ぶべき?

答えは「正しい知識を持って必要だと感じたら選ぶ」

ヒューマングレードのフードとは、人と同等の品質管理されたフードのこと

ヒューマングレードの基準はバラバラで、記載する際はメーカーの自己申告のため「ヒューマングレード」と書かれてあるから高品質とは一概には言えません。

また「人と同等」であって「人と同じ食べ物」ではありません。

よくあるヒューマングレードの誤解

・人が食べるものと同じものを与えたほうがいい
・人が食べないものは与えないほうがいい
・人が美味しいと感じるものを与えるべき など

猫と人ではそもそも必要な栄養素が異なるため、人と同じ食べ物や人が美味しく感じるものを与えなくてもいいです。

しかし、体に悪影響を及ぼす人工添加物(保存料や着色料など)があまり含まれていない方が品質がいいと言えます。

補足として、基本的にはペットフード安全法により規定されているため、健康に害するレベルの原材料は使用できないことになっています。

ペットフード安全法 第七条

農林水産大臣及び環境大臣は、次に掲げる愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止するため必要があると認めるときは、(中略) 製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、当該愛がん動物用飼料の製造、輸入又は販売を禁止することができる。
1.有害な物質を含み、又はその疑いがある愛がん動物用飼料
2.病原微生物により汚染され、又はその疑いがある愛がん動物用飼料

チキンミールや鶏副産物が体に悪いと聞いたけど本当?

「人間の食用に適さない」が1人歩きして「ミールや副産物が病原体に汚染されて危険」という間違った情報が広まった可能性があります。

副産物:肉以外の内臓や皮膚、骨などのこと
ミール:副産物を粉状にしたもの

微生物を死滅させるために適正な加熱処理を加えなければならないとペットフード安全法により規定されています。
病原体に汚染された原材料も使用できないように定められています。

また、農林水産消費安全技術センター(FAMIC)により、定期的に立入検査が行われており、検査結果がウェブ上に公表されています。

なので原材料に○○ミールや○○副産物が入っていても、猫の体に悪影響を与える可能性は低いと考えられます。

それでもやはり人と同等の品質管理されたフードがいいということであれば、ヒューマングレードのフードを選ぶべきです。
これに関してはその人の考え方次第だと思います。

品質のまとめ

品質の良さとは

・猫にとって必要な栄養素が含まれている→総合栄養食ならOK
・猫に不要な成分(着色料など)が含まれていない
・極端な栄養素の偏りがない
・酸化していない→自然由来の酸化防止剤が含まれている

フード選びのポイントにおいて価格と品質に関しては少しわかったと思います。

次に最後のポイントを解説します。

ポイント③ メーカー

最後のポイントはメーカーです。

国内、国外含め数え切れないほどのペットフードの会社が存在します。
小さい会社から大きな会社までさまざまで、理念や特色も異なります。

私がメーカーを見る際に重視しているのは

・会社規模
・研究やデータ
・理念
・口コミ

です。

その根拠を説明していきます。

会社規模

単純ですが「会社規模が大きい」ということは「商品がよく売れている」ということ。
「商品がよく売れている」ということは「人気、信頼性が高い」ということ。

情報化社会において悪徳な方法で利益率を高める会社は淘汰されていくので、会社規模が大きくて長年の販売実績のある会社は、”安心できる”と言っていいです。

もちろんベンチャー企業でこれから伸びてくる会社もあるため、一概には言えませんが、基本的には規模と実績が安心材料になります。

研究やデータ

その会社がどの程度フードに関して研究を行い、データを持っているかも重要なポイントです。

・科学的根拠に基づいてフードの製品開発が行われているか
・研究に投資をしているか
・顧客データやアンケートをもとに改良を重ねているか

そのメーカーがどれほどフード開発に力を注いでいるか、どれだけ動物や飼い主さんのことを考えているか、そのメーカーの公式ホームページを見て確認してみましょう。
研究や飼い主さんの生の声に耳を傾け、改良を重ねているメーカーは信頼ができます。

ただ研究に投資しているメーカーは、その分フードの価格が高くなります。

規模の大きい会社やベンチャー企業では動物福祉に力を入れているところも多く、私たちがフードを購入することで動物福祉に貢献できることは嬉しいポイント

理念

メーカーの理念もフードを選ぶ上では重要なポイントです。

フード選びで悩んだら色々なメーカーのホームページを覗いて、そのメーカーの動物に対する情熱を見るだけでも選ぶきっかけになることもあります。

ぜひ皆さんも気になるフードがあれば検索してホームページを見てみてください。

口コミ

商品を買う際気になるのが「口コミ」

実際に気になるフードがあれば、ネットの口コミを見るのも一つ。
ただし注意点があります。

・具体的な評価がされているものを読む(匂い、食いつき、粒の大きさなど)
・「全然食べない」という口コミがあっても、そのフードがダメとは限らない(その子の好みの問題も結構あるため)
・根拠のない悪評は見ない
・どんなフードも高評価もあれば悪評もあるため、振り回されすぎないように注意

まとめ

今回の記事のまとめをします。

・自分が望む品質の中で、納得できる値段のフードを選ぶ
・まずは情報を取捨選択し、自分が正しいと思う情報をもとに選ぶ
・グレインフリーでもヒューマングレードでもOKだが、栄養素の偏りがないか注意
・メーカーの公式HP+口コミをチェックし信頼できるか判断
・といっても大きく的外れなフードは少ないので、総合栄養食ならどれでもOK
・病気などで療法食を与える際は必ず獣医師に相談する

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